哲学と宗教は何が違うのか?

プラトンはいっときイスラエルあたりに行って、自分の考えである「世界は合理的にできている」を説いて回ったらしい。その後この考え方は中東地域に根付いてユダヤ教に発展したようだ。ユダヤ教は「宇宙は全知全能のたった一つの神様がお造りになった。したがってすべて一つの真理に基づいて合理的にできている。」はずだ、というのが根本にある。この考え方はプラトン主義に他ならない。

このような合理主義はその後脈々と2000年以上受け継がれる。宗教としては、キリスト教、イスラム教と受け継がれ、科学としてはニュートン力学まで、哲学としてはデカルトまで続く。芸術にも影響を与える。写実的な古典派の絵画、数学的はバッハの音楽などは合理的で、神を思わせて美しい。

しかしその後これがどうも怪しくなってくる。科学ではゲーデルやアインシュタインあたりからが宇宙は合理的にはできていないのではないか、と言い出す。哲学ではニーチェが、神は死んだと言った。何も本当に神が死んだと言いたいのではない。神=合理主義と読み替えると、「合理主義は死んだ」といっている。

哲学であるプラト二ズム(プラトン主義)と、宗教であるユダヤ教やキリスト教。両方とも「合理主義」を信条としているのだが、この二つつまり「哲学」と「宗教」はどう違うのだろうか?

違いは・・、意外に答えるのが難しい。

相違を列挙すると・・。

同じ点

1)文献がある。哲学では著作、宗教では聖書や聖典など。

2)創始者がいる。哲学では歴史に名が残っている哲学者たち。宗教ではキリストやムハメッドなど教祖。

3)哲学も宗教もその論旨を自身の理屈でしか証明できない。

違う点

1)宗教には、教会やお寺などのわりあい立派な建造物が多いが、哲学にはない。

2)宗教では戦争になったりするが、哲学で戦争になったという話は聞いたことがない。

3)宗教団体という言葉はあるが、哲学団体という言葉はない。宗教は団体化するが哲学は団体化しないという事か。

三番目に書いた団体化という事がキーワードかもしれない。つまり、思想が思想のままなら哲学。それが団体化すれば宗教というわけだ。団体化という事は、政治化と言い換えても良い。つまり思想が政治化すれば宗教という事になりそうである。

こう考えると、政教分離とはおかしな言葉だ。思想が政治化して、宗教になるなら、政治化が宗教のレゾンデートルという事になる。にもかかわらす、宗教と政治を分けて考えるのは、なぜなのか?

一つ考えられるのは、ローマ帝国の庇護を受けるために、パウロが聖書で「ローマ人への手紙」で述べた、「人は今所属している政治権威に従うべきである。なぜならすべての政治権威は神様によって計画されたものだから。」という理屈。これにより世俗は政治が支配し、精神は宗教が支配するという二元支配がはじまり、政治は宗教を庇護し、宗教は政治に「戴冠」などを通じて権威を与える、「二王国論」が始まった。しかし、この理屈は「政教分離」などではなく、むしろ「政教相互依存」ともいうべき事態である。

東洋に目を向けると、インドの政治的リーダーであったマハトマ・ガンジーは熱心なヒンズー教徒だった。日本の政治リーダーの聖徳太子は仏教と切っても切り離せない。新大陸のアメリカは大統領が就任式で聖書に手を置く。これら政治リーダーは、特定の宗教と密接な関係で国を統治したと言える。

政教分離の本来の狙いを世界地図をじっと見ながら考えてみる。「政教分離」とは、実は「宗教」={政治の一形態」の前提の元、多数派宗教団体が、少数宗教団体からの決死の抵抗を回避するため、見た目上「宗教」と「政治」を分離したように見せかけ、少数宗教団体にある地域での共存を促す理屈ではないかと思えて来る。

紛争が記憶に新しい中東やボスニアなどを振り返ると、例えばボスニア。ある種の宗教であった共産主義がひとまとめにくくっていた地域が思想とともに崩壊し、混じって住んでいたムスリムとクリスチャンが「政教分離」の理屈を取り入れないまま、戦争に突入してしまった。今は分かれて住んでいる。

そこで、はたと思いついたのは、そのむかし仏教の布教活動を不要なものにした「檀家制度」を編み出した日本は、「政教分離」を最もうまく実践していた国だという事である。しかし、秀吉も長崎のキリスト教協会を檀家制度に組み入れた居たらに、もしかして弾圧をしなくてもよかったのでは・・・。

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ソシュール理論による外国語学習法

英語が全く駄目だった筆者が言語学者であるソシュールにヒントを得て生み出した2年でTOEIC900点をめざせる全く新しいアプローチの外国語取得方法を紹介します。

髪林孝司プロフィール

髪林孝司

髪林孝司:
システム経営コンサルタント
職歴:
株式会社リクルート
(住宅情報事業部)
株式会社テレビ東京
(経理部、営業部、国際営業部、編成部、マーケティング部、イ ンターネット部などを歴任)

2001年
テレビ東京ブロードバンド企画設立
代表取締役社長就任
(主要株主;テレビ東 京、NTT東日本、シャープ、NECインターチャネル、集英社、角川ホールディングス、 小学館プロダクション、DoCoMoドットコム、ボーダフォン)

2005年
同社東証マザーズ上場

2006年
インターエフエム買収
代表取締役社長就任(兼任)
11年連続赤字累損22億の会 社を1年で4000万弱の黒字会社にターンアラウンド

2008年6月
テレビ東京ブロードバンド取締役退任

趣味:
ロードバイク
中華料理(家族の食事は私が作っています)
タブラ(インドの打楽器)