扁桃帯の暴走を大脳皮質で抑える
2012-05-03 (木)
少し前、NHK特集で「ウツの最新治療」をテーマに良い番組が放送されていた。今、私の自宅にはテレビが無いので、念のため友人二人に録画をお願いして後日ブルーレイで放送を見た。この放送はウツを患っている人、ウツに問題意識を持っている人必見であると思った。
最新治療法とは、頭の右斜め前に機械を当てて電磁波の刺激で大脳皮質を刺激するというもの。本当に効くのかと疑問に思った頃、番組では司会者の筧利夫がCGを使って仕組を説明してくれた。この説明がウツを患っている人には是非聞いてもらいたい内容だった。
番組でウツは、扁桃帯の暴走によって起こると仮定している。扁桃帯は、原始脳と言われる脳幹にある。脳幹は本能に近いところを制御する。扁桃帯は主に恐怖を感じる機能を司り、原始の時代はちょっとした物音に敏感に恐怖を感じる事が生き残りの必須条件だったことから発達した。
たとえば猛獣の物音を聞いた我々の先祖は洞穴に身を隠す。しばらく息を潜ませる。そのうち猛獣はいなくなる。猛獣が去っていった事を悟るのはそんなに難しく無い。大脳皮質を使い少し頭を働かせるだけで危険が去ったことが分かった。
危険から身を守るため、扁桃帯で恐怖を感じる。その恐怖は危険が去った時に大脳皮質が「危険が去った」と分析して「恐怖心」を取り除き日常生活に戻る。二つの脳の部分が、「危険の察知」と「危険の取り除き」を司り、お互いに連絡を取り合いながら、脳のバランスを取っていた。
この連絡が途切れた状態、または大脳皮質の制御が弱まった状態がウツであると番組は分かりやすく解説していた。
古代人と違い現代人は、恐怖を感じる時間が長い。今度昇進できないかも知れないという恐怖は1年続く。リストラされるかも知れないという恐怖は何年も続く。また、現代人にとって例えばリストラの危険が迫ってるかどうかはライオンが迫っているかどうかほどハッキリしない。恐怖が実在しているかどうかグレーなのだ。
古代人に比べて現代人はいつも扁桃帯が興奮した状態になりやすい。それでも普通の人は大脳が論理的に「そのような恐怖を感じる必要はない」とバランスを取ってくれるが、悲観的な人は、扁桃帯が主導権を握ってしまい、ウツになる。
大脳皮質の活動が弱まった人でも訓練でその機能を強化でき、ウツ治療に効果を上げてきた。番組でも取り上げられた認知療法である。しかし、カウンセリング中心の認知療法だけでは効果が出ない患者に、冒頭で紹介した物理的な刺激を大脳に直接与える電磁療法が最近効果を上げていると報告されていた。
扁桃帯で感じた恐怖や不安、落ち込みを大脳皮質で制御するという構図。このことを理解するのが最も重要だ。何か不安を感じたときはその不安を客観視してみて、自分が感じている程に心配する必要があるかどうか論理的に吟味してみるのがよい。不安が軽減される。
扁桃帯が興奮しているところを大脳皮質がなだめているところをテレビのフリップを見るようにイメージすれば、自分の不安感を制御しやすくなる。