Q7.目標達成の為、大幅な権限を社員に委譲していますか?

社員一人一人の目標が全社目標の部分集合になっているのが望ましい事が分かりました。では全社目標を踏まえた上で、社員各々の目標やゴールイメージはどのようなプロセスで設定されるべきでしょうか?
これは、第一章にあった自由と関連性があります。人間は自由に、自発的に決めたことは、他人から押し付けられたことより、真剣に取り組む傾向があります。何故なら、自分で目標を考えるプロセス自体に、責任感が育くまれる要素があり、また興味を持てる要素があるからです。また、自分の目標の背景を考えることにより。会社の現状、所属する業界の状況、ひいては社会の経済状況などに思いを寄せることにもつながります。
このような学びのプロセスを経るのと経ないのでは、取り組み方に大きな差が付きます。会社側から任務を一方的に命令されることは多くの会社で行われていることです。辞令を発令してから、異動の背景やポジションの重要性を説明しますが、はっきり申し上げて満足している人は少ないはずです。「サラリーマンだから当然」と言って、甘んじて受けている人は多いのではないでしょうか
少し話題はそれますが、この辞令一枚で人事異動という慣習は日本だけに見られる現象であることをみなさん御存じでしたか?特に勤務地の移動が伴ういわゆる転勤命令が絶対命令なのは日本だけです。
「超整理法」で有名な野口悠紀雄先生の本業は日本経済論です。著作の中に「1940年体制、さらば戦時経済」があります。
この本の論旨は、「現在日本企業で当然とされている考え方の始まりはそれほど古くなく、実は第二次世界大戦の戦時経済から始まって今でも続いている」、というものです。つまり現代企業の、「新卒採用」「終身雇用」「年功序列」「年齢給」「業界賃金一律制」「人事異動」などの制度は戦時中に確立され、戦後も官僚制とともに温存され、戦後の高度成長に貢献した、とのことです。
マッカーサーは憲法を変え、天皇の位置づけを変え、財閥解体など民主化を進めましたが、実は会社そのものを動かす仕組みには手を加えなかったらしいのです。
会社都合で紙切れ一枚の辞令に絶対従わなければ会社を辞めなければならないという暗黙の了解も戦時の軍事・経済体制で官僚や軍需産業などから始まり、やがてすべての組織に広まったそうです。
私が社長を務めていた会社では、本人の承諾なしに会社が一方的に部署や、勤務地を変える命令を出してはいけない、としていました。社員には非常に好評でした。
管理部門をやるか、営業をやるか、コンピュータのプログラムをやるかなど部門をまたいで、自分の役割を自分で考え決めるのです。私が感じた結論として、皆一旦自分で決めた後は、彼らは決死の覚悟で自分の目標達成に向かって努力していた。しかも楽しみながら、という事実です。
自分で決め、自分で道を切り開いていく、この過程で自分を成長させていく。仕事が「労働」から「学び」へと変わる瞬間です。
第6章のまとめ
自分で立てた目標は、他人に与えられた目標よりも、達成しようという熱意の面で勝る。また本人の勉強になる。

さて社員一人一人や末端事業ユニットの権限に話に移ります。いくら自分で立てた目標でも、それを実施する際、それ相応の権限がなければ、やる気が萎えてしまいます。いちいち上司にお伺いを立てたり、役員会で稟議に回したりなどは権限がある状態とは言えません。あと、困るのは、権限がある様な無い様なはっきりしない場合です。上司は権限を与えると言っておきながら、同時にホウレンソウ(報、連、相)を強いる。これは全く権限がないのと同じです。

別の視点から。第一章で申し上げた自由(権限)とやる気の相関関係について私の経験をお話します。

私が社長をしていた会社は、当初、株主から出向社員を派遣してもらっていました。2年から3年たつとそれら出向社員に面白い現象が起きました。出向社員をもとの会社に戻すと、会社をやめてしまう、という珍事が続いたのです。どの会社も一流企業なのに、預かった社員6人のうち、4人が会社を辞めてしまいました。実は私は辞めた人間の気持がなんとなく解っていました。

実際私に相談しに来る時はすでにやめることを決意していて、本人曰く「会社の歯車の一部のような感じでモチベーションが湧かない」「経営に関していろいろなことに気がつき会社に提案するが上司は解ってくれない」とのことでした。

私が起業した会社は、現場の社員が経営者や会社オーナーの視点が持てるよう、さまざまな仕組みを作り込んでおきました。この仕掛けでの業務プロセスを経験した人は、すべて経営者や会社オーナーの目線になります。つまり権限が無限大。したがって、元の会社に戻っても「いまさら、権限のない一従業員に戻れない」というわけです。

もうひとつ権限について、別の事例を引いてお話ししましょう。

一昨年でしたか、NHKスペシャルでアメリカ軍のITによる進化について分析している特集がありました。

そもそも近代的軍隊組織を完成させたのは、「戦争論」を書いたプロイセン生まれのクラセヴィッツとその弟子でプロイセンの将軍であったモルトケによると言われます。特にモルトケの軍隊編成方法は中央集権組織の原型とされ、組織経営史上の功績と見なされています。

1991年1月に始まる第一次湾岸戦争までは、クラセヴィッツの考えた中央集権的組織がアメリカ軍をはじめ様々な国の軍隊組織のスタンダードでした。この時のアメリカ軍は、すでにIT化が始まっており、参謀本部はITの力であらゆる情報を手元に集め、そこで作戦を立て各戦地に指令を出していました。イギリス軍は当時多国籍軍で戦争展開する為にアメリカ軍の情報装備にキャッチアップするのが大変だったと言っています。

しかし、2003年の3月に始まる第二次湾岸戦争では、アメリカの軍隊編成や作戦行動は一変します。これまでのように情報を中央に集中させるのではなく、個々の戦車などをIT武装し戦場現場に情報を集めます。毎日の作戦行動(たとえば戦車による爆撃)などは各々の戦車内でITによる情報分析をもとに決断され実行されます。

これにより、アメリカ軍の戦場における判断スピードは格段に向上しました。それに加えて、現場同士がITにより、戦況や作戦の成果など、直接情報交換することで「ナレッジマネジメント」の精度が飛躍的に向上しました。

従業員はシステムで管理する。システムはルールなので、ルールの範囲ないで従業員は自由なプロセスで仕事ができる。システムの無い会社はいちいち上司にお伺いを立てなければならず、これではやる気が萎えてしまいます。

第7章のまとめ

現場が立てた目標を意欲的に達成してもらうには、完全な権限委譲が必要。重要事項の上司への事後報告を許容することは、現場での判断を早める。自分自身での意思決定は判断力を高め組織を活性化させる。その為には目標の計数化と業績をいつでもチェック出来るシステムが必要。

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ソシュール理論による外国語学習法

英語が全く駄目だった筆者が言語学者であるソシュールにヒントを得て生み出した2年でTOEIC900点をめざせる全く新しいアプローチの外国語取得方法を紹介します。

髪林孝司プロフィール

髪林孝司

髪林孝司:
システム経営コンサルタント
職歴:
株式会社リクルート
(住宅情報事業部)
株式会社テレビ東京
(経理部、営業部、国際営業部、編成部、マーケティング部、イ ンターネット部などを歴任)

2001年
テレビ東京ブロードバンド企画設立
代表取締役社長就任
(主要株主;テレビ東 京、NTT東日本、シャープ、NECインターチャネル、集英社、角川ホールディングス、 小学館プロダクション、DoCoMoドットコム、ボーダフォン)

2005年
同社東証マザーズ上場

2006年
インターエフエム買収
代表取締役社長就任(兼任)
11年連続赤字累損22億の会 社を1年で4000万弱の黒字会社にターンアラウンド

2008年6月
テレビ東京ブロードバンド取締役退任

略歴:
札幌生まれ
趣味:
ロードバイク
中華料理(家族の食事は私が作っています)
タブラ(インドの打楽器)