Q8.社員のひとり一人が自分の会社に及ぼす貢献度を、数字で分かるシステムはありますか?
2009-10-24 (土)
前章では、「自由や権限の大きさ」が「やりがい」に結びつくことを学びました。しかし、この「自由や権限の大きさ」はあくまで「社員の心に火つける」だけで、「情熱の継続」は別の話です。別のシステムが必要です。
マラソンはゴールまで42.195kmと知っているから頑張れるのです。また選手はよく時計を見ますが、自分がどの地点にいてどのぐらいのタイムで走っているかを確認することが、ゴールまでの気力につながります。山上りは頂上が見えた方が、力が湧いてきます。またところどころに何合目という印があり、自分がどのくらい頂に近づいたかきが分かるようになるのも励ましになります。
これらを「仕事」という視点で考えてみると、何キロ走らなければならないのかを知らない。現時点でのタイムが分からない。霧が山を覆い頂上が見えない。今何合目にいるのかもさっぱりわからない。このような状況で頑張り続けるのは非常に難しい。仕事は、今までの自分の成果を見て初めて、ゴールまで継続する力が湧いてくるものです。
この「いままでの自分の成果というものがいかに重要か」を逆説的にスターリンが証明しています。政敵をシベリアに送り、「国家の為に穴を掘れ」と命じます。政治犯も国家のためと言われると、必至で穴を掘る。穴を掘る作業は掘る面積と深さが示されます。つまりゴールが見えるわけで、最初は頑張れる環境が与えられるのです。さて何人かで必死の思いで穴を掘りあげます。そうすると。今度はその穴を掘り返した土で埋めろという指令が出ます。意味が分からないまま埋めると、また同じところを掘れという命令が下ります。これで屈強な政治犯も精神を病んでいくそうです。今までの自分の必至の成果を無価値にして、さらにそれを何回も繰り返させるというのは、スターリンが人間の心の構造をよく知っていて悪用した例と言えます。それも非常に効果的に。
自由と権限を身にまとい、将来に向かってチャレンジしていこうとする社員には、会社が「地図とコンパス」を用意しなければなりません。この地図とコンパスに当たるものが、「管理会計」という仕掛けです。アメリカ軍の戦車のようにITで重装備された管理会計が必要です。全社の財務状況とチームの財務状況、個人個人の貢献度、これが三位一体で全社に公開されていなければなりません。公開というよりは、社員の目に必ず触れるように工夫し、「見たくなくても目に入る」、マス広告のようなプッシュ型の仕掛けが必要です。
私が創業した会社では、インターネットにより全社にすべてのチームの業績を公開し、トップページにはそのランキングをのせ、業績のいいチームから、青、黄色、赤、グレーと色分けしていました。そしてわたしは、青のチームにはほぼ無制限の権限を与え業務報告も四半期に一度としました。赤のチームは毎週レポートを要求し、グレーになると3か月以内に事業の売却か撤退を要求しました。このようなコンパスがあって初めて、社員達は、経費の削減、売上の向上、そして両者のバランスなどを、経営者目線でしかも継続的に努力し続けることが出来たのだと思います。
非上場の会社では、会社の業績さえ社員に公開していない事が少なくありません。これでは、社員は問題意識を持つことができず、社長のロボットのように働くしかありません。つまり社員に権限と自由がない活性化していない組織になってしまいます。
権限という名の自由を与え、真の自由の為の社是社訓を与え、さらに進捗状況や方向性の是非が手に取るよう分かるのるための管理会計の仕掛けを用意する。これらが揃って初めて長期間にわたる活性化された組織が出来ます。正しい判断が出来ます。それが会社の継続的な高業績につながるのです。社長と社員が同じ目線になるのです。
第8章のまとめ
社員のやる気を継続発展させ、社員に正しい判断を促す為の、コンパスと地図に当たる管理会計システムが会社には必要である。その仕掛けは、プル型ではなくプッシュ型でなくてはならない。