Q15.目標は長期的がいいですか?それとも短期的がいいですか?

どのような産業・業界でも寿命があります。横軸に時間をとり、縦軸にお金(売り上や利益)をとるとだいたい下図の様になります。(神田昌典さんの本に詳いです)

curve3

右図を見て分かるのは、売上高の曲線(産業拡大曲線)と利益の曲線は一致しないと言うことです。現代では、企業の大きさ(時価総額や純資産)を図るのは「売り上げ」ではなく「利益」であると言う考え方が定着しています。そこで、利益曲線を見ると、成長期、発展期に利益が上がり成熟期や衰退期には下がって行く事が分かります。神田さんの説では、「あるビジネスが寿命を全うした場合、その一生に稼ぎ出す利益の実に70%は成長期及び発展期に眠る」とのことです。

また、ある大手監査法人の代表が言っていましたが、「50年以上続く大手企業で今でも創業当時と同じ事をしている会社は一社もない」そうです。つまり永続的企業は、自社のビジネスが成熟期に入る前に、新しいビジネスを生み出している。企業が所属する産業自体(企業立地)から別天地に移動してしまう事さえある。このことを「企業の立地替え」と言います。

IBMは世界初のコンピュータハードメーカーでしたが、パソコンの普及により、大型コンピュータのニーズが減ったこと、デルコンピュータなど新興パソコンメーカーにパソコン事業で遅れをとったこと等で、10年ほど前に苦境に立ちました。外部からルイスガースナーをCEOとして招聘し、いわゆる企業の立地替えを断行しました。なんとハードメーカーを辞めてしまうという大胆な立地替えです。大手コンサルティング会社アクセンチュアを買収し、今はITソリューションを武器にしたコンサルティング会社として大成功しています。

いつまでも同じビジネスにしがみついているのは危険です。ふつうのビジネスの寿命を30年とすると15年目位には新しい分野の開拓が必要です。IT産業の様に5年おきにビジネスモデルが変わるような業界では2年おきくらいに新しいビジネスを開発出来なければ、成功は一瞬で終わります。

実は私は、この立地替えで失敗しました。稼ぎ頭であったモバイルコンテンツビジネスが衰退期を迎えましたので、新しい事業の開発を大がかりに進めました。今でもビジネスモデルに欠陥はなかったと思っていますが、大株主への説明が不足していた。新規ビジネスを始めて半年ほどで、親会社よりストップを掛られてしまいました。これはやはり説明不足の私に非がありました。

第15章のまとめ

長期にわたり、一つのビジネスモデルにしがみつくのは危険である。各々モデルには寿命があり、それが成熟期に入る前に新しいモデルを開発しなければ、一つのモデルの終焉とともに会社はその幕を閉じる。

up

Q14.社員一人一人は、業務のカイゼンつまりトライアンドエラーを毎日繰り返していますか?また、トライと促進する社内システムをおもちですか?

ビジョナリーカンパニー(Jコリンズほか)にある3Mの話を少しさせてください。3Mは元々自動車の板金加工を手がけていたとのことです。ある日社員の一人がおもしろいものを車に貼り付け車に塗装をしているのをほかの同僚が見つけました。今までの塗装は窓やバンパーなど塗料のいらないところをよけて塗るのに高度な熟練を要していました。ところがこの若い男は、塗料を塗らない部分と塗る部分の境界をビニールのテープで覆ってしまい、その上から塗料を塗る方法を思いついたのです。この方法は塗装作業に飛躍的な改善をもたらしました。ただ、それを見ていた別の男の方が会社を繁栄させました。一般消費財としてそのテープを売り出したのです。それがあの「スコッチテープ」です。

彼らの社訓は「To solve unsolved problems innovatively」翻訳すると「未解決の問題を革新的な方法で解決する」ことです。ポストイットも社員が自分で作り使っていた「剥がせる付箋」を見た他の社員が商品化したものです。

皆さん、コカコーラの誕生秘話をご存じですか?もともとは、Vin Marianiというコスタリカ人が考えた医療用カクテルで、ワインとコカの実をブレンドしたものした。コカの実は元々リューマチ痛や高地での高原頭痛などの鎮痛作用の薬でした。つまり麻酔薬としてのコカインが少量入っていたのです。その後、アメリカアトランタの薬剤師であったJohn Pembertonはこれと同様なものをPemberton’s French Wine Coca.と呼んで販売し始めヒット商品になりました。1886年禁酒法によりワインの替わりに独自のシロップを使い合法的な飲み物にしました。19世紀の終わりには、コカイン入りの飲料が禁止されたため、コカの実からコカインを除外することに成功し今のコカコーラの源流になります。

その後、元アトランタ市長で薬局チェーンの経営者Asa Griggs CandlerがこのレシピをPembertonから当時のお金2300ドルで買い取ります。もともと彼は、新薬になりそうなパテントを買い取り商品化するビジネスをしていました。殺菌効果のあるこの飲み物をうがいまたは飲むことにより、除菌用の飲料として販売するはずでした。しかしふたを開けてみると、大人の嗜好品として大成功を納めることになります。

偶然から生まれる商品の方が、ニーズを先取りし、計画的に生まれる商品より数が多い、というのが「ビジョナリーカンパニー」のJコリンズの分析です。

よい製品やサービスを開発するには、マーケティングも大切ですが、偶然も大切です。偶然の商品は、経営者から生まれることは多くない。なぜなら、多くの人がいろいろなアイディアを出し、その中からの偶然の方が断然数が多い。つまり、打席に多く立っていることになります。また大抵の場合、そういう商品は元々の用途と違った商品のはずです。

社員一人一人がトライアンドエラーを繰り返し、射撃でいえば下手でも鉄砲をどんどん撃ち、そのうち「偶然」大当たりが出る。この偶然をねらうには、多くの人数と多くのトライが必要です。

もともと業務の「カイゼン」とは小技の積み重ねが会社の競争力を向上させるという、日本のお家芸です。これはリーダーの仕事ではなく、社員皆の仕事です。また「カイゼン」は生産プロセスに有効なだけではなく、事務仕事のプロセスにも応用できます。

それに加え、「おまけ」としてたまに会社を大きく飛躍させるチャンス(社内ナレッジの商品化)が眠っている。トライアンドエラーは、2度おいしい「イチゴ大福」のようなものです。

黙っていて毎日実験と挑戦を続けられる人は多くないと思います。仕組みやシステムとしてこのトライアンドエラーを社内に作り込むのが社長の仕事です。

第14章のまとめ

トライアンドエラーは一粒で2度おいしい。はじめは、「カイゼン」の積み重ねによる業務の効率化や競争力の向上、もう一つは偶然から生まれる商品のブレーク。

up

日本語の母音は日本だけでしか通用しない

中学校に入って初めて英語を習った時、This is a pen. の発音を発音記号ではなく、日本語のカタカナに置き換えて「ジスイズアペン 」と覚えた方は多いと思います。実はここに、日本人英語の最大の問題が眠っています。

ソシュールの理論を勉強した皆さんは、「そうか、一つ一つの言葉はおのおの事物とセットになっている訳ではないので国によって一つ一つの言葉がカバーする領域が違うのだ」という事を理解していただいた事と思います。つまり、ある言語と別の言語は意味的に繋がっていない、別々のあたかも中に浮いている図書館の様であると。

実は、発音もそうなのです。日本語の「あいうえお」という母音、「かさたなはまやらわ」と言う子音は日本独特のもので日本語にしか当てはまらないのです。国際的に見て日本は母音が少ない方です。日本人が苦手とするRの音とLの音の区別ですが、日本語のラ行の音は英語のRの音ともLの音とも違います。日本語のラ行おとは英語のLの音に比較的似てはいますが、アメリカ人が聞くとハッキリ訛っているのが解ります。また、ラ行の発音は一種類しかないので、日本人はRの音を発音出来ない、またLの音とRの音を区別出来ないのです。これは、フランス人がHの音を発音できない、韓国人がBの音を発音出来ないのに似ています。

また、日本語は子音も少なめです。英語のthの発音は日本語にありません。これは練習するしかない。また、Vの音も日本語にないものです。

もう一つ日本人英語のなまりを挙げると、言葉の最後の子音が有声音になると言うことです。私は札幌出身ですが、札幌の繁華街と言えば「すすきの」です。このすすきの、本州の人が発音すると何か変な感じがしていましたが、最近やっと理由が分かりました。北海道の人はすすきのの2番目のすが無声音、つまり口ではスの音を出しますが声帯は震えていない。本州の人は2つめのすも有声音にしてしまうので北海道の人が聞くと違和感があるのです。

これと全く同じ事が日本語と英語の間にも起こります。日本語は、無声音の発音がほとんどありません。もしくは、有声音か無声音かに関して文法上の決まりがない。これはひらがなが四面で表記されていることを見ても明らかです。なので、日本人が例えばexpense を発音すると最後のsの音を有声音にしてしまうのです。これは、アメリカ人が聞けばかなり訛って聞こえます。

今日の結論、それは「言語間には、意味上の繋がりもなければ音の繋がりもない各々全く別の世界である」英語の発音をマスターするには、発音記号をしっかり覚えそれぞれの音を理解し、発音するための口の形を繰り返し練習することが大切です。

up

うつの回復、それは突然やってくる

私がうつの時につらかったのは、その時々のつらさもさることながら、このつらさが一生続くのではないか?と言う不安感です。うつは初めの頃はなかなか回復を実感できず一生直らないのではないかと落胆します。

病院に行き始めた年の春、気分の落ち込みを我慢しながら、毎年の花見シーズンに恒例だった親しい友人宅での花見パーティに参加しました。親友の奥さん(奥さんも今では親友)の言葉が当時の私を随分慰めてくれました。

彼女の友人でうつの人がいてやはり直らないのではと思い悩んでいた。回復がなかなかすすまなかったので絶望していたが、ある日突然回復が始まり、今では完全に直ってしまったとのこと。

そのときは、「あれっ、私は直っている」とキョトンとしたそうです。よく、英語の学習者が「なかなか英語が出来るようにならず、学習意欲を保つのが大変だったが、ある日急に英語が出来るようになった」と言います。実は私も若いときに英語で同じ体験をしました。ある日映画館に行って映画を見ていた所、字幕を見ていない自分を発見しあっけにとられたものです。

私のウツ回復も同じでした。最初のうちは、とにかくなかなか回復の兆しが見えない。直らないかも知れないという不安がますますうつを悪化させる堂々巡りでした。薬を変え6ヶ月程度経過したときに回復を実感し始めました。それからは毎日回復を実感出来る日が続き、人生に希望を持てるようになりました。

良く、うつに関する本に回復期は三寒四温とあります。つまり、良くなったり悪くなったりの日が続くと言うことです。私の場合も回復期には山谷がありました。しかし少なくとも山の日があることが解っただけで、将来は山の日が多くなっていくのだろうと類推でき大変救われた思いが下ものです。

そしてその日は突然訪れました。「あっ、俺は直った」と思える日がとうとう来たのです。うつに苦しむ皆さんも必ずこの「あれっ?直っている」と思える日が訪れます。

up

Q13.目標へのアプローチ方法を会社と社員は共有していますか?

この質問を見られたあなたは、「会社が目標へのスタンダードなアプローチの方法を提示し、それを社員に共有する(教育する)」と思われたのではないでしょうか?しかし本当の意味は違います。

本当の意味は、「社員一人一人が、自分の建てた目標に対し(会社の建てた大きな目標の部分集合が前提)社是社訓を参考に自分自身でアプローチ方法を考えそれを会社や他チームとナレッジマネジメントする(よい方法をほかのチームと共有する)、です。地方分権型のシステム経営ですが、ノウハウを共有するというところがミソです。

実は、私はこれで痛い経験をしました。

私が起業した会社は少人数のアメーバー(京セラのコピーライト)で運営されていました。目標へのアプローチ方法はアメーバー自身で考えていたのですが、アメーバー同士の競争心を煽り過ぎたせいか、よい結果が出てもそのアプローチ方法やノウハウをほかのアメーバーに教えたがらない、という問題が起きたのです。これでは会社全体として、競争力を最大化できません。

そこで会社の管理部門が各アメーバーの情報をヒアリングすることにしました。このウィークリーレポートをいう制度でナレッジマネジメントの状況は大分改善されました。後に気がついたのですが、一番よいのは、ナレッジマネジメントの為のブレストをたまに(四半期に一度くらい)全社レベルで開催することです。実施の結果は予想通りで、活発な議論が出来、結果ナレッジマネジメントに貢献しました。

第13章のまとめ

目標へのアプローチ方法は社員やアメーバーが考える。会社と共有するのは第一義的にはナレッジマネジメントの為であって報告の為ではない。

up

アーカイブ



howto

ソシュール理論による外国語学習法

英語が全く駄目だった筆者が言語学者であるソシュールにヒントを得て生み出した2年でTOEIC900点をめざせる全く新しいアプローチの外国語取得方法を紹介します。

髪林孝司プロフィール

髪林孝司

髪林孝司:
システム経営コンサルタント
職歴:
株式会社リクルート
(住宅情報事業部)
株式会社テレビ東京
(経理部、営業部、国際営業部、編成部、マーケティング部、イ ンターネット部などを歴任)

2001年
テレビ東京ブロードバンド企画設立
代表取締役社長就任
(主要株主;テレビ東 京、NTT東日本、シャープ、NECインターチャネル、集英社、角川ホールディングス、 小学館プロダクション、DoCoMoドットコム、ボーダフォン)

2005年
同社東証マザーズ上場

2006年
インターエフエム買収
代表取締役社長就任(兼任)
11年連続赤字累損22億の会 社を1年で4000万弱の黒字会社にターンアラウンド

2008年6月
テレビ東京ブロードバンド取締役退任

趣味:
ロードバイク
中華料理(家族の食事は私が作っています)
タブラ(インドの打楽器)