日本人はなぜ英語ができないのか??という問題。
2015-10-11 (日)
よく教育関係者の間で問題となるこの言葉。理由をいろいろ考えてみた。
まず理由として、よく言われるのは、「日本語と英語は違う」というもの。アメリカ人がフランス語をマスターするのは、日本語をマスターするより容易に違いない。女優のジョディ・フォスターはフランス語が堪能で、フランス語の吹き替えは自分の声を入れるらしい。
日本人が中国語をマスターするのと、フランス語をマスターするのではどちらが容易だろうか。中国語は漢字を使っているし中国と日本は歴史的に見て深いつながりがあるので、中国語の方が容易に見える。しかし、中国語学習者は皆苦戦している。
うーん。だんだん解らなくなってきた。
学習者が少ない言語を話す人は皆かなりレベルが高い。チェブラーシカというロシアのキャラクターを日本で使うため、原作者と交渉に行ったときロシア語ができる知人に同行してもらったが、完璧なロシア語と評判だった。
海外に住んだ経験のある日本人で英語ができない人は、会社の転勤などで海外に赴任した人達だ。一方、できる人はグリーンカードを取って永住を決意した人達。ほとんどネイティブのレベルの英語は使う。ある女性の元部下は、筆者も交えてアメリカの会社と電話会議をしたが、相手に彼女が日本人だとは気づかれなかった。
欧米留学経験者。英語ができない人が案外多い。テレビ局時代のある先輩はアメリカの有名私大を卒業して、卒業後はアメリカ人にアメリカ史を教えていたそうだ。そのころは英語が堪能だったはずであるが、私が知り合ったころには、独学の私より英語ができなかった。
いろいろ書き連ねたが、俯瞰してみるとどうもニーズがある人は外国語を習得しやすいようだ。
さて、日本人がなぜ英語ができないか、という本題に戻る。日本人は、受験以外、英語へのニーズが実はあまりない。普段の生活で英語が必要という事はまずない。
話は明治時代にさかのぼる。西周(にしあまね)や福沢諭吉は、欧米で生まれた近代の言葉を日本語に訳した。鉄道、新聞、改札、電話、哲学、経済などの言葉はrailway, newspaper, exit, telephone, philosophy, economicsなどの日本語訳である。これで、日本人は近代文明を自国語で勉強できた。アジアの国々、例えばフィリピン、インドネシア、マレーシアなどは近代語の自国訳語がないため、大学の教科書はいまだに英語だ。
日本人は会社に入って英語を使うことはまずない。筆者は出版社とテレビ局にいたが、英語は全く必要なかった。
日常生活を振り返ってみたい。たとえばテレビ。日本のテレビ番組はレベルがかなり高い。普通の日本人なら日本のドラマを見る方が海外のドラマを見るより断然楽しめる。日本の映画もまた面白い。テレビで放送すればハリウッドの予算100億円の映画より「極道の妻たち」の方が視聴率をとる。音楽も邦楽の売り上げは洋楽の4倍だ。
ここに「なぜ英語を学ぶか」というアンケート調査がある。1位は「趣味、自己啓発」。なんと英語学習者の65.1%が趣味を理由に英語を学んでいる。(2012年オリコン調べ)
見てきたように、幸運にもほとんどの日本人は、英語を話す差し迫ったニーズがない。英語を使う必要がないのだから「英語ができない」のは当然の帰着なわけで、表題の問題点の本質は、「日本人は英語ができない」ことを問題視するのが問題だ、と分かる。