システム経営BLOG

Q25.社長は、会社の業績を四半期ごとで考えていますか、それとも年度で考えていますか?

虫の目、鳥の目という言葉をご存じでしょうか。鳥の目は上空から鳥瞰し全体を見る事です。また虫の目とはミクロな視点で細かく見ることです。両方あってこそリーダーの視点として、経済や産業全体を見渡しながら、自社に何ができるかを現場の視点で考えます。

この考え方は、考えるスパン、つまり時間的な長さにも当てはまります。短期的にものを考えるのと長期的にものを考える、の両方です。

では短期的な視点とは、どのくらいの期間を指すのでしょうか?私は短期にも2種類の期間を設けるべきと考えます。一つは毎日。できれば日次決算を行い経済トレンドが変わっていく際になるべく早く手を打つ。しかし1日で会社の業績を判断するには無理があります。

業績を計るという意味では、3ヶ月(4半期)を目処とします。特にキャッシュフロー重視の会社では一ヶ月程度だと儲かって居るか損しているかわかりにくい。3ヶ月で見るとトレンドがつかめます。

では10年や20年の長いスパンの視点はどうかと言えば、「1980年代までの第二次産業主導経済では意味があったが、1990年代以降の情報産業主導経済では意味がない」私はと思います。ドラッカーが言っているネクストソサエティ、情報主導経済では10年後を考えることに意味は無い。何故なら社会の進化が前に比べ10倍のスピードで進み、10年後に何が起きるかを誰も想像できないからです。

では長期とは何年か?ITの世界で仕事をしてきた私は、最長で3年と思います。3年後はぎりぎり予想できる。後は、時代の変化に備え財務基盤を強くし、その時々で柔軟に対応できる会社にしておく事が重要です。

第25章のまとめ

短期的視点は毎日と3ヶ月、長期の視点は最長3年程度で考えよ。

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Q24.全社員に各位(役員も含む)の給与や企業年金の額を公開するシステムをお持ちですか?

これをやると、社内が嫉妬心や自己憐憫の渦になります。

ただ自分がどの位置に着けているかを知ることは重要です。同じランクの仕事をしている人の年収マップを作り、自分の位置を知らせてあげるシステムを構築するのです。年収マップとは縦軸に管理会計上の指標、横軸に仕事に対する姿勢をとり、全社員を職制別に文字通りマッピングするのです。そして人事担当セクションはその職制に応じたマップを公開します。また仮にAさんの給与や賞与の明細書には、添付資料として縦軸上のAさんの点数、横軸上のAさんの点数を付記するのです。そうすれば、自分の職制に該当するマップ上の星の散らばりを見て、自分の星を見つける事ができます。直感的に自分の課題を知るわけです。

また、私は役員以上の人間は給与を公開すべきと思います。上場会社などは経営の透明性上当然と思いますが、対株主だけではなく、対従業員に関しても公開すべきと思います。

あまり高いと従業員との軋轢を生みますし、あまり安いと社員は自分の将来に夢を見ることができなくなります。最終的に給与を決めるのは社長であることが多いのですが、公開すると決めると逆に自分の給与をあまり低く出来ない。少し前の調べですが、日本の上場会社社長の給与は新入社員の8倍程度というデータがあります。私の知り合いの若者はとても新入社員で私の元居たリクルートに入社しました。給与の良い会社にはいりましたが、入社後リクルート社長の給与を知り、ここで社長になっても自分は満足出来ないと考え会社を辞めて起業してしまいました。

前の章でも申し上げましたが、給与は生活を送る手段であるのと同時に社員のプライドの拠り所でもあります。これは社外へのプライドもありますが、社内でのプライドも重要です。自分の星の位置は自己実現の程度のバロメーターになるのです。このようなシステムを活性化の為に導入することは、システム経営の重要ポイントといえます。

第24章のまとめ

従業員がそれぞれの仕事上の位置を確認できるシステムを導入せよ。現在位置が分からなければ努力にも限界がある。

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Q23.会社の組織構造は縦割り型ですか、それともアメーバー型ですか?

私の働いていたテレビ局に関して思い出すことがあります。私はテレビ局に入社し最初に配属されたのは経理部でした。隣の島は資材部と呼ばれ、ボールペンや消しゴムと行った社内の消耗品を一元的に買い社内に配布するセクションです。その当時、資材部のルールでは毎週木曜日までに伝票でほしい商品を請求し、翌水曜に支給すると行ったものでした。支給時には資材部まで誰かが取りに来なければ成りません。資材部の窓口の人は私のよく知る人で好人物なのですが、窓口業務をし始めたとたんに、神に成ってしまいました。急ぎの支給は一切認めず、伝票の記入ミスも認めず、ずいぶん社内の人を悩ませていました。他の会社もだいたいそうだと後に分かりました。

私は、元々このような管理セクションは、社内サービスセクションと思っていて、文房具などをほしい人はお客さんと思っておりました。しかし、このように担当と役職がついてしまうと、本人は気づかずその権限を最大化して自分の存在意義を見せようとするものなのだと思いました。なにしろこの人は、経理部にいて売り上げ管理をしているときはこのような態度は見せなかったのですから。

官僚組織(ピラミッド組織)はこのように生まれます。購入部、総務部、営業部、生産部など職制別に人間が配属されている会社は、それぞれの権限を最大限にしようと躍起に成ります。第二次世界大戦中の日本陸軍はアメリカには負けてもいいけど、海軍だけには負けたくないと言っていたそうです。

第23章のまとめ

縦割り組織で、自分の職制担当が決まった瞬間、権限が生じる。それぞれの人悪気はなくともその権限を最大化しようと躍起になる。商品別のアメーバー型のシステム経営を導入し、社内で無駄なエネルギーを空費することは避けよ。

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Q22.会社の末端組織(たとえば課、係など)の人数は平均何人位ですか?

「マジカルナンバー7」という言葉をおききになったことがあるでしょうか?「なぜ一週間は7曜日か?」「なぜ虹は7色か?」「なぜ7人の侍か?」などには共通の理由があるのです。私は、この考え方を「超整理法」野口悠紀夫著で初めて触れました。少し調べてみると、元アメリカ心理学会会長でプリンストン大学教授であった認知心理学の祖、ジョージ・ミラーが提唱し定説となった概念でした。

7つまでしか覚えられない

彼は、「人間の短期記憶の容量は約7つまでである」ということを発見しました。

たとえば虹は日本では7色ですが、世界的に見ても七色以上に分類している国はないそうです。アメリカでは六色です。実際の虹はシームレスです。つまり境目がない。しようと思えば十色にも出来るはずなのにしないのは、七つ以上だと一つ一つの色イメージが鮮明にならないからだそうです。

昔は東京の電話番号も7桁でした。その当時は100件近い電話番号を暗記していた人を私は知っています。7桁の時代を知っている人は8桁になってから電話番号を覚えにくくなったと感じている人は私だけでは無いと思います。

また曜日もそうです。もし七曜日の他にたとえば「星曜日」という日があったとして自分で想像してみてください。七つの時には一曜日一曜日ごとに活き活きとした個性があったのに、曜日が一つ増えるだけでなんとなく一日一日のイメージが曖昧になると感じてしまいます。

「七人の侍」は侍たち一人一人の個性を活き活き描くのに最大の数は七人でるのを黒澤監督が知っていたのでしょう。Sコヴィーの名著「七つの習慣」も同様と思います。

少し前、竹下登元首相がまだ生きていたころ、政治の中枢は田中派が握り、今の民主党小沢氏は田中派7奉行の一人に数えられていました。ほかの面々の名前もいまだに私はすらすら言う事が出来ます。奉行が7人だったらです。

会議は出席者が七人までだと一人一人の意見が短期記憶に残り話が深堀されます。しかし、九人、一〇人と数が多くなればブレストなどの会議では話が弾みません。どの意見が誰から発せられたか分かりにくくなるからです。大人数の会議は往々にして単なる報告会になりがちです。

さて会社です。会社組織の末端最小単位をチームと呼ぶことにします。このチーム構成は七人位がちょうどいいと私は思います。ひとりひとりの個性がイメージ出来、議論をするにも深堀ができ、実際の業務でもそれぞれの役割分担を明確にイメージ出来、成果に対する個々の貢献も皆で共有し納得出来るのが7人位までと思います。

7人以上いると使う側と使われる側が出来てしまう。

このようなことは、ヒエラルキーの数にも直接影響します。末端ユニットが7人以上たとえば13人などの場合、この最小ユニットのはずの組織の中にもう一つ階層ができることが少なからずあります。本来最少単位のはずが、その中に使う側と使われる側が出来たのでは、もう一回層ヒエラルキーが増えることになります。

第22章のまとめ

会社の末端組織の人数は7人まで。それ以上では、一人一人の個性が表出しない。議論も活発化しない。

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Q21.経営陣と従業員とは中間管理職を介してコミュニケーションしていますかそれとも直接ですか?

さて、次は組織のフラット化に関する話です。ピラミッド型組織では多くの中間管理職を経てお話がトップに行く。これがなぜいけないのか?それは、伝言ゲームの弊害をもろに受けるからです。

人への口頭のみによる伝言は時間を置くと正確に記憶されない。説明に十秒以上かかる情報は2人目で六十%、三人目で三十%しか正しく伝わらないというのが通説です。割に短い文、たとえば「昨日家の白いシャム猫が子猫を4匹生んだ」が口頭だけだの伝聞だと翌日三人目位に話が来るころには、「少し前、誰かの家で、白い子猫が生まれた」とやや曖昧になり、もう少し人数をくぐり、もう数日経つと、「白いペルシャ猫が生む子供の数は四匹くらいだそうだ」などと全然違う意味になってしまったりします。

カトリック教徒はローマ教皇を頂点に三億人の組織です。なんとこの兆大な組織はわずか七階層で運営されています。伝言ゲームを極力排除した形になっています。

会社を見ると千人規模の会社でも七階層以上で運営されている場合が多い。私のいたテレビ局本社の従業員は800人程度でしたが、階層は ①平社員。②主任、③課長、④副部長、⑤部長、⑥局次長、⑦局長、⑧取締役、⑨常務、専務取締役、⑩副社長、⑪社長、⑫会長と何と一二もの階層がありました。何をするにもこの階層順に提案を上の階層の会議に伝言で上げていき、数回の伝言ゲームののち、常務会で審議され決定される仕組みでした。しかしこれは特別ではありません。他のテレビ局も同様。最大手広告会社の電通も同じで、私の予想では世の中にあるごく普通の会社もこのような組織に成っていると思います。

ソフトバンクの人から聞いた話ですが、孫社長は、誰かから報告を受けるとき必ず現場で実際に仕事をしている人間から直接聞くことにしているそうです。管理職から間接的に聞くことを好まないようです。孫社長が説明を受ける光景は、孫社長が大きな部屋の巨大プロジェクタに向かい座っている。説明する人間は、孫社長のすぐ脇に構え説明に入る。という案配だそうです。孫社長は伝言ゲームの非効率性をよく知っていらっしゃるのだと思います。

孫社長は、現場の仕事もよく知っていると思います。それでも直接現場から生きた声を聞きたがる。ましてや現場に精通にていない社長であれば、現場力をつけるためにも「話は現場から直接聞く」に限ります。

伝言ゲームの弊害はいくら言っても言い切れないほどです。現場の人間が創意工夫したことを、できれば社長が直接聞く、そのようなフラットな組織が会社の活力を高め、従業員のやる気を引き出すと思います。

第21章のまとめ

多くの中間管理職をはさむコミュニケーションは、伝言ゲームの罠にはまる。現場に強くない社長ほど、現場との直接のコミュニケーションができるシステムを採用すること。

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Q20.社員が目標を達成した場合、それを公にして称賛するシステムが会社にありますか?

マズローの人間の欲求の五段階説をご存じの方も多いと思います。

①   生理的欲求

②   安全の欲求

③   所属と愛の欲求

④   承認の欲求

⑤   自己実現の欲求

この中の③所属と愛の欲求つまり、家庭や会社を持つことが満たされると、④の周りからの承認の欲求が表に出てくるのです。お金はどちらかと言えば、②の安全に必要な欲求で基本的なレベルが満たされると人は満足します。

法外なお金をもらうより、家族や会社、社会で認められたいと人間思うもので自然な欲求です。私も、つい最近までこの欲求に動かされていたと認めざるを得ません。

何も、映画スターになったり、小説家になったり、大企業の社長になったりしなくても、何かを達成した人を周りが賞賛する仕掛けがあれば、④の承認の欲求は満たされます。ベーシックなところで満たされるというのが重要です。

しかし、このベーシックなレベルで、承認の欲求が満たされる事は意外に少ない。日本の会社を見渡すと難しいといえます。仕事はできて当たり前、ミスの時にはしかられるけど、うまくやり遂げてもオフィシャルにほめられない。このような環境では人間リスクを冒せなくなります。いかにミスを最小限に抑えそつなく毎日を送るかが唯一のオフィシャルな賞賛の表出である、昇進、肩書きに結びつくのです。

リクルートでの経験です。ある営業マンが目標を達成下とします。まず、社員全員が聞く館内放送が「○○チームの●●さん、目標達成おめでとうございます。」と放送されます。その営業マンの机の上には、祝い●●さん、○○おめでとう、と垂れ幕が飾られ、本人ばかりか、周りの人間にも金一封が配られます。その人が営業から帰ってくるとエレベーターを降りた瞬間に同僚が待ち受けていて拍手がわき起こります。さらに4半期に一回正式な舞台で表彰されます。このようなシステムを経て社員は皆、自信を深めて行きました。自信がさらに受注を増やし、また賞賛される好循環になります。

このような事がシステム化され、そのシステムを設計、実施するための専門部署さえありました。

また賞賛のもう一つの側面、それは賞賛されたときに自分自身で自分の成長を感じ取ることが出来る、これは自分を評価すると言うことです。この事が自分自身に与える満足感は非常に大きい。

マズローの④承認の欲求は社会人にとっては、それほど強いものなのです。

第20章のまとめ

社内からの賞賛はやる気を生む。このようなシステムを会社に埋め込んでおくべきである。お金を与えるなら、このシステムの積極運営の為のツールとして位置づけるとよい。このようなシステムは社員のセルフエヴァリエーション(自己評価)を高め、さらなる実績へと繋がる。

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Q19.年収に占める成果報酬の割合は40%以上ですか?

結論から言います。年収に占める成果報酬が40%を超える人は、よほどの高給取りでなければ生活に安定感を感じることができなくなります。生活の安定感、安心感がなければ、仕事に集中するのは難しいです。

以前、富士通の社内告発本が話題を呼びました。私も世間で騒がれている成果報酬というものに懐疑的です。

右にあげた理由だけではありません。いろいろ問題がある。たとえば評価を「数値目標の達成度」とした場合、その目標自体を低く設定することが後を絶ちません。仕事に取り組む姿勢など心の評価となると、不可能ではありませんが、だいたいは上司に当たる人の評価能力が追いつかず、納得の行く評価には至りません。それでは、会社全体の業績と連動するのはどうかといえば、せいぜい連動していいのは役員以上の人々だけで、業績が悪いときも会社が無理してでも給与の維持に努め、その代わり業績のいいときも少しの上乗せで我慢してもらう。こんな方が社員は安心して働けるものです。

ご褒美としてお金をあげて個々の社員は嬉しがるかといえば次の章にあるような賞賛を与える方が、社員が喜ぶという事を、私はリクルートでの体験を通じて経験しています。また京セラの稲盛さんは「給与を上げても感謝するのは2~3ヶ月で、すぐになれてしまう。逆に下がるのはいつまでも覚えている。従って給与は少しずつあがるのがのぞましい」とのことです。

40%というのは年収1000万くらいの人でぎりぎりセーフな数字。平均的な収入である600万くらいの場合、業績により上下するのはせいぜい20%までが限度と思います。下がるときは、基本生活を圧迫しない程度に留めておくべきです。

第19章のまとめ

成果報酬型給与体系は社員のモチベーションにあまり効果が無いばかりか、生活不安が先に立ち、社員のやる気をかえって萎えさせる。

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Q18.社員の年収は相場に比べ高い方ですか、それとも少ない方ですか?

社員の給与の多寡とは何でしょうか?社員の生活の質や、幸福度に直結するものでしょうか?

ここで私のスイス人の友達のお話をしましょう。彼はスイス生まれでスイスの最高学府を卒業し、アメリカの大学院を卒業しました。アメリカの公認会計士資格CPAを持つエリートです。ドイツ語、スイスジャーマン、フランス語、日本語がほぼ完璧です。卒業してアジアに行きたいと思い、中国か日本か迷ったらしいですが、当時の中国はまだ近代化しておらず、日本を選らんだそうです。彼は日本のスイス銀行に就職しました。当時の年収は7000万円だったそうで、この当時、私は彼と140㎡以上あるアパートをシェアしていました。

その後彼はサラリーマンに嫌気がさし自分で製造業の会社を起業しました。一時は資金繰りに苦慮し貧乏な生活を余儀なくされたそうです。その会社は結局中国の会社に売却し相当な資産を得たそうです。

今彼は六本木ヒルズに住み、車は新車のベントレーオープンタイプ。大のオーディオマニアで自宅にある彼のオーディオセットはどう見ても500万円以上はしそうです。その彼が言うに、貧乏で安アパートに住んでいた頃もそんなに不幸ではなかった。少なくとも今の生活の80%位はエンジョイしていた。たぶん幸福とお金はそんなに相関関係はないのではないか?というお話を聞き、なるほどと思いました。

貧乏とお金持ちの両方を彼ほどの落差で経験した人は少ないと思います。通常のサラリーマンの給与差がこれほど大きいわけではありません。お金は社員の生活の質や、幸福度に直結するものでしょうか?という問いに対して、直結しないというのが、私の直感です。

しかし、私は社員の給与が競争他社より少しだけでもいいから高い方がいいと思います。かなり高いならなおさらいい。なぜなら、それは、社員のメンツに関わることだからです。

社員は自社の善し悪しをはかる物差しとして業界での自社の給与水準を見る傾向にあります。つまり、一流企業か二流企業かを給与の額で推し量るのです。

広告代理店で一番給与のいいのは、電通です。博報堂の給与もいいですが、電通にはかなわない。電通の社員は自分の会社にプライドを持ち、博報堂の社員はプライドは持つが、電通の方が社格は上と考えている人が多いと思います。

私の元居たテレビ局はキー局としては下位でした。それでも給与はかなりよく競合他社と比べても9掛くらいです。いかにいいかと言うことは、雑誌に出ていました。日本の上場企業全体の給与ランキングでなんと13位に位置づけていました。つまり非常に高給の会社です。

しかし、競合他社に比べると、ほんの少しだけ低かった。この少しだけの差のおかげで、自分たちの会社を一流と見ることが難しくなる人がおり、最初からこの会社を1位にするぞという決意を持って仕事に取り組む人が、少なかった。

同じような例では、発行部数では読売や朝日に大きく差をつけられている日経ですが、給与は他の新聞社よりよかった。このことが、「大きさでは一番でないが、給与が一番なので自分たちの会社が新聞社としては一番だと」社員に思わせて居るのだと思います。

給与の多寡は、幸福にはあまり影響を与えないが、員が自分たちの会社が一流がどうかの判断材料になると思います。自分たちの会社の給与が一番という自信が、業績に良い結果をもたらす。この好循環をシステム経営で作り出すのです。

第18章のまとめ

給与は多い方がいい。それは社員の生活のためというより、社員のプライドの為。給与のいい会社に居る社員は自分の会社のことをいい会社として見る。それが好業績につながる。

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Q17.社長はここ10年、これからの20年のITによる業務の効率化をどう見ますか?

ITが仕事に効率化をもたらしたのは否定出来ない事実だと思います。E-mailやインターネットのない世界にはもう戻れる人はいないでしょう。

ITはただ効率化だけをもたらしたのではありません。ITが真にもたらした物は、資本(=工場)の価値の陳腐化です。今まで成功要因であり、同時に失敗要因であった工場(=資本)や工場から生み出される工業製品そのものに競争上の差がなくなってしまった。つまり工業製品はコモディティ化し、工場などハードが持つ競争格差がなくなった。これからの競争優位の源泉は、アイディア、デザイン、エコロジー、ブランド(世界観)など、商品の性能以外の部分にシフトしてくる。つまり、付加価値は性能ではなくその商品が持つ情報にシフトしてきていると言うのです。

ドラッカーは、20世紀の終わりから21世紀前半は工業社会から情報化時代への移行期だと定義しています。生産手段の所有者が工場(=資本家)から、人間の頭脳(個々の知的労働者)へと移りつつあるのです。しかもスピードという点では、工業化にかかった時間を5百年とすると、今回は50年です。経済や社会価値観などがすっかり入れ替わるのに、わずか50年しかかからないというスピード感。

エリヤフ・ゴールドラットというイスラエル人の学者がTOC(theory of constraints )ということを提唱しています。日本語で言うと、「制約条件の継続的改善」ということになります。 簡単に説明すると、事業は工場も含めいろいろな仕事のパーツで出来上がっています。生産性を上げるには、一連のパーツの中で、他のパーツより効率の悪いパーツつまり、仕事のスピードが遅いところ(ボトルネックと呼びます)を探し出しそこを改善するのが全体を早めることになる、ということです。たとえば、工場は何の問題もないのに、材料の仕入れが不十分で本来の生産能力を十分に発揮できないような場合は、仕入が制約要因となります。他のところを向上させても全体にとって意味はなく、この仕入れの改善こそ、まず始めに実施すべき改善点です。

この考え方は普通、主に製造業の工場管理に使われますが、他にも転用できます。国の産業を俯瞰する時にも便利です。先進国の産業全体を見渡すと、今の時代、「工場の効率性=資本金の効率性」がもはや制約要因ではなく、知的労働者の存在が制約要因になり、したがって現代および次世代において、事業としてパフォーマンスを上げるには、この知的労働力を如何に探し当て、その付加価値である知識を自己学習と研修によりいかにして向上させるかが鍵を握っているのです。

この図表にある時代の変化を是非感じ取って下さい。

moneyresouce

第17章のまとめ

今社会では付加価値をもたらす源泉の変化が起きている。資本家が所有している工場などから、人間一人一人が所有する情報や知識にシフトしている。ITは、この動きを加速させる。

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Q16.拙速でビジネスを展開するのと、満を持してビジネスを展開するのではどちらが成功する確率は多いと思いますか?

「満を持しているうちに他社に先行され追いつけない」と言うのが真実の様です。10年ほど前の衛星放送の経緯を思い出します。まず、コンテンツの調達が出来ていなく、準備不足と指摘されながらも商社連合のパーフェクTVがスタートしました。次に、外資とソフトバンク連合のJスカイB、そして800万人の映画ファンを会員に持つTSUTAYA主導のDIRECTVがスタートです。TSUTAYAは会員の住所氏名やE―Mail、電話番号などの個人情報を抱えており、また全国の店舗でもキャンペーンが出来ると、有力候補と考えられていました。

私のいたテレビ局もアニメーションをDIRECTVのみに供給していました。

さて、ふたを開けてみるとパーフェクTVには先行者メリットとして他のCS局がサービス開始するまでの間にかなりの会員を集めてしまいました。また決定打は伸び悩んでいたJスカイBが合併し今のスカパーなった事です。有利と言われていたDIRECTVは撤退せざるを得ませんでした。私のいたモバイルコンテンツ業界も、先に始めたインデックス、サイバード、等が業界をリードしたままでした。

マイクロソフトはまだバグのある状態で新世代OSを発売し始める事で有名です。発売後不具合を調整してゆくというやり方です。万を辞さないで拙速に行動し、行動しながら改善していく。今のところこの方法は成功しています。

ところで、2009年現在で一番利益率のいい出版社をご存じですか?私の友人が社長を務める、「ディアゴスティーニ」です。利益率27%です。ここの高利益率の秘密は、実はシリーズごとに地方で一回出版してみて、だめならやめるという究極の拙速作戦に有ります。全国的に売られるのは、地方で売ってうまくいった物だけです。とにかく先に試して見る。顧客の反応は実際に販売してみないと分からないとこの会社は確信しています。

次のページの図表をご覧ください。

timing

私がよく株主総会で使った図表です。ここで注目していただきたいのは、出遅れてうまく運営した場合と、拙速で下手にしか出来なかった場合の成果の比較です。拙速の方が果実は大きい。これは私が実際ビジネスで体験した現実です。孫子も「戦は、作戦は多少まずくとも相手より速く攻撃をする事が肝要である。」と言っています。

もちろんタイミングよく、さらにうまくやっていく事に超したことは有りません。申し上げたいのは、有望事業にはなるべく早いタイミングで参入した方がよいと言う事です。

第16章のまとめ

「兵は拙速を尊ぶ」

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ソシュール理論による外国語学習法

英語が全く駄目だった筆者が言語学者であるソシュールにヒントを得て生み出した2年でTOEIC900点をめざせる全く新しいアプローチの外国語取得方法を紹介します。

髪林孝司プロフィール

髪林孝司

髪林孝司:
システム経営コンサルタント
職歴:
株式会社リクルート
(住宅情報事業部)
株式会社テレビ東京
(経理部、営業部、国際営業部、編成部、マーケティング部、イ ンターネット部などを歴任)

2001年
テレビ東京ブロードバンド企画設立
代表取締役社長就任
(主要株主;テレビ東 京、NTT東日本、シャープ、NECインターチャネル、集英社、角川ホールディングス、 小学館プロダクション、DoCoMoドットコム、ボーダフォン)

2005年
同社東証マザーズ上場

2006年
インターエフエム買収
代表取締役社長就任(兼任)
11年連続赤字累損22億の会 社を1年で4000万弱の黒字会社にターンアラウンド

2008年6月
テレビ東京ブロードバンド取締役退任

趣味:
ロードバイク
中華料理(家族の食事は私が作っています)
タブラ(インドの打楽器)