正露丸
2020-06-01 (月)
どこの家の救急箱にもたいていは入っている正露丸。効能を見ると下痢、食あたり、くだり腹、むし歯痛、虫歯にも効くとある。筆者もよく腹を壊しては、正露丸のお世話になった。正露丸は薬臭くて、飲みにくいのが難点で、砂糖を固めた皮に包まれて飲みやすくした正露丸トーイ(糖衣)というが売れている。しかし筆者は普通の正露丸の持つ、まるでアイラ島のスコッチのような、あの強いヨード香(薬臭さ)が薬効を連想させて好きである。
この間「飲んではいけない薬」という本を読んでいたら、正露丸が取り上げられていた。最新の医学では下痢は止めずに悪いものを出し切ってしまうのがいいらしい。今になってそういわれてもという気がする。医学とはよく意見を変えるものだ。意見を変える例は他に、糖質がある。少し前までは、炭水化物は極力避けたダイエットをしましょうなどと言われていた。しかし最近では、炭水化物を取らないと脂質やたんぱく質が多くなり、内蔵に負担がかかるとのことで推奨されていない。
さて話は変わる。D カーネギー著の世界的ベストセラー、「人を動かす」(原題”How to get a friend and influence people”)は処世術の本として名高い。例えば、人との会話では自分がどんなにしゃべりたくても我慢して聞き役に回れ、とある。そのほうが相手に好意 を持たれるとのこと。これは真理である。昔、竹下登元首相は人と話すとき徹底して聞き役に回った。「ほう、なるほど、さすが」としか言わなかった。竹下ファンが増 え、彼の元に多くの政治家が集まった。聞き役を続け、還暦を過ぎるころから彼は無表情になった。まわりの人から、「竹下先生は何を考えているか解らないので恐ろしい」と言われた。人心が離れ始め、首相になってからの在位期間も短かった。
小泉純一郎元首相は晩年に花開いた人だ。若い頃から本音で人にぶつかってきた元首相は人から慕われるタイプではなく「変人」と言われ続けた。しか し、総理大臣になってからは思ったことをストレートに言葉に出すわかりやすさで国民の人気を博し、それまであまり親しくなかった政治家、例えば武部勤元自民党幹事長などは元首相が在任中忠誠を尽くした。
カーネギーの言う、「自分の本音は隠して相手に合わせよ」というアドバイスはあまり親しく無い人に対しては有効だ。仕事で知り合った取引先、そんな に近しくない同僚などには相手を喜ばせるカーネギー流は確かに効果がある。しかし、長年つきあうであろう親友、家族、一蓮托生の仕事上のパートナーに対してはふさわしくない。本音を隠して表だけを取り繕っても早晩馬脚を現し、かえって相手に不信感をもたれる。
このことは正露丸に例えると良い。糖衣の正露丸(正露丸トーイ)は短時間(親しくない友人のように)ですぐ飲み込むから良いのであって、もし長い間なめている飴(長い付き合いの親友のように)なら、口の中で転がしているうちに苦みが出てくる。すると「お前、本当はそんなやつだったのか」と不信感が沸く。長年つきあう相手には、素の正露丸の様に、「俺は苦いやつだけど体にはいいぞ」と素の自分でぶつかるに限る。年月を経る事に友情は厚くなるはずだ。







