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Q30.社長は、会社の価値算定方法をご存じですか?

丸山学さんの「社長になる力」の中に「会社とは何か(なぜ会社を設立するのか)」という問いが有ります。岩井克人さんの「会社とは誰の物か」を読んでいたので私は、社員から見れば、「労働の場所」、株主から見れば「配当金でキャピタルゲインを得る所」、取引先から見れば「商品を買ってくれるところ」公的には、「税金を払ってくれる所」などいろいろなものと思っていました。

ところが、丸山さんの本のページをめくると、単純明快に「投資物件」と書いてありました。私にとってはこの方がすっきりします。なぜすっきりするのか考えてみると、「労働の場所」「配当金を得る場所」「商品を買ってくれるところ」「税金を払ってくれるところ」などは非常に大切な事ですが、それは投資物件としての会社が設立された後に、それに付随して顕出するものと気がついたからです。会社とは「投資物件である。」私の中で今までもやもやとしていたものが、霧が晴れるようにすっきりした瞬間でした。

「投資物件」とするといろいろな事がはっきりしてきます。「銀行にお金を預ける」、「国債を買う」「社債を買う」「投資ファンドに投資する」「特定の会社の株を買う」「不動産を買う」このような事と比べて、「会社を設立する」の意味や意義を考えなければなりません。よくプロの投資家が進めるのは、インデックスファンドつまり、日経平均やダウ平均に連動して動くファンドの事で手堅く手数料が安い。過去20年の日本の株式の平均利回をとって見ると年率6%位になります。従って、投資物件としては6%位なら会社を設立するのではなくインデックスファンドを持っていた方が「お得」と言うことになります。

ではアントレプレナーとしての「生き甲斐」はどうするのか、と言う人がいるかもしれませんが、この場合起業は諦めて、会社に勤める、とか別の事業で利回りのよい会社を設立するとか考える必要が有りそうです。投資物件として他によりよい利回りの物が有るのに、自分が株主としてまた経営者として利回りの悪い物件(会社)を設立しようとしているなら、それはビジネスではなく、趣味の世界の話と思います。

投資物件として会社設立を考えると、前に触れたROIが会社の指標として優れているのが分かるはずです。投資に対していくらのリターンがあったかの指標ですので。

しかし、これは管理会計上話であって自分満足の世界です。投資家が見たいのは正式発表された会社全体のROIです。昨年と比べ何%会社の株の価値が上昇したのか?インデックスファンドよりは、個別の会社に投資する方がリスクは高いですので、たぶん年率6%で投資家は満足しないでしょう。私の直感は8%以上です。

この会社のすべての価値を前年度と比べるのに一番便利な指数は(特に上場会社は)会社の時価総額です。非上場の会社でも時価総額の計算方法は、純資産方式、類似会社比較方式、DCF方式などいろいろ有ります。ここでは、非上場の会社でよく使われるDCF(Discount Cash Flow)についてお話します。

あなたが年間200万円の家賃収入のあるアパートのオーナーだとします。今、市中金利を仮に3%とすると、このアパートをいくらで売ればよいでしょうか?この考え方は会社を売るときに計算する方法と同じです。DCFが使われる。DCFの基本的考え方はこうです。今の100万円は来年の100万円より価値がある。何故なら今の100万円は来年までに利息が付き103万円になる。従って来年に期日のくる手形100万円を今もらうとすればそれは97万円の価値しかない。つまり、100÷1.03=97これをPV(Pesent Value)つまり現在価値と呼びます。毎年の家賃収入をCFとします。市中金利の3%をRとしますと簡略化して次の数式が成立します。

PV=CF/(1+R)+CF/(1+R)²+CF/(1+R)³+・・・・・・・+CF/(1+R)∞ ・・・ (A)

両辺に(1+R)をかける。

(1+R)×PV= CF+CF/(1+R)+CF/(1+r)²+・・+CF/(1+R)∞ ・・・・・・(B)

(A)  – (B)= PV – (1+R)PV = – CF  PV – PV – RPV = ―CF

―RPV =  ― CF    PV = CF/R つまり200万円の家賃を金利3%で割ったのが年間200万円のアパートの現在価値=売値です。このDCFを基準に会社を経営していくことが重要です。会社の場合アパートの家賃に相当するのが利益です。それも税引き後キャッシュ利益です。1000万円の資本金の会社は税引き後のキャッシュ利益を最低80万円はほしい。年利8%を超えるためです。この数値、出来れば10%を超えたいものです。

この方法は、会社全体でも使えますが、前述したように小さな事業ごとにも管理会計の指数として使えます。また社内で新規事業を立ち上げるとき、果たしてそれにお金を投資すべきかどうかの判断材料に、また既存の事業で利益率が下がっているものに対して、撤退するかどうか判断にも利用出来ます。

リーダー、幹部、また管理部門の人間は、この会社の価値算定を常に頭に置き経営に当たらなくてはなりません。またキャッシュと発生主義ベースの利益との違いや、減価償却の扱いなど、経理財務の基礎知識は必須です。

資本主義の社会で生きているということは、この「利回り」という言葉にすべてが集約されてしまうと言うのが、善し悪しは別として私が最近感じる事です。

第30章のまとめ

会社や事業の正否は利回りで考えよ。利回りで考えるには経理財務の基本知識が必要。

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ソシュール理論による外国語学習法

英語が全く駄目だった筆者が言語学者であるソシュールにヒントを得て生み出した2年でTOEIC900点をめざせる全く新しいアプローチの外国語取得方法を紹介します。

髪林孝司プロフィール

髪林孝司

髪林孝司:
システム経営コンサルタント
職歴:
株式会社リクルート
(住宅情報事業部)
株式会社テレビ東京
(経理部、営業部、国際営業部、編成部、マーケティング部、イ ンターネット部などを歴任)

2001年
テレビ東京ブロードバンド企画設立
代表取締役社長就任
(主要株主;テレビ東 京、NTT東日本、シャープ、NECインターチャネル、集英社、角川ホールディングス、 小学館プロダクション、DoCoMoドットコム、ボーダフォン)

2005年
同社東証マザーズ上場

2006年
インターエフエム買収
代表取締役社長就任(兼任)
11年連続赤字累損22億の会 社を1年で4000万弱の黒字会社にターンアラウンド

2008年6月
テレビ東京ブロードバンド取締役退任

趣味:
ロードバイク
中華料理(家族の食事は私が作っています)
タブラ(インドの打楽器)