Q26.社長は、反対意見を言う誠実な、部下をお持ちですか?
2010-03-12 (金)
仮に会社の利益や正義と自分の昇進が天秤にかかったとします。
株主(=オーナー)は間違いなく会社の利益や正義を支持するでしょう。オーナーは出世する必要がありませんし、会社が儲かってくれるのがいい。また最近は、反社会的な行為は、長い目で見れば結局会社の利益を損なうばかりではなく、会社そのものをつぶしかねないと分かって居るからです。
では経営者と言えば、「本当の経営者」は株主と同じ視点を持ちます。でもオーナーの目線を持たない経営者はそうとも限りません。では、「本当の経営者」の条件ですが、次に挙げる通りです。
文字通り自分がオーナーで社長も自分の場合。この場合は、自分の昇進という点においては、これ以上昇進の必要が無いので会社利益や会社正義を選択します。(ただし、脱税に関しては範囲外です)
では、オーナー以外経営者ではいかがでしょうか?この場合2つに区別する必要があります。一つめは、親会社や大株主、多額の借金を受けている銀行など自分以外に自分の進退を決められる人が居る場合、これはまだある種のサラリーマン的であって、自分の地位の継続という名の出世と会社の利益や正義が反対の方向を向いた時に、利己的な人はたとえば業績不振の場合、粉飾などをして自分の地位を守ろうとしてしまいがちです。
二つめです。親会社が居ない、大株主も居ない、銀行からの借り入れも無い、このような会社の社長は他人に自分の進退をとやかく言われる必要がない。当てはまるかどうかの見分け方は、自分の進退に関しても、そして後継の社長人事に関しても人事権を掌握しているかどうか。
しかし、業績が悪い場合や在任が長くなっても居座ると言う意味では、自分の利益と会社の利益が完全一致しているとは限りません。世の中に、引き際を先延ばしにしたり、任に有りそうもない自分の子孫に後を継がせようとしたりと、晩節を汚す人は少なくありません。
数年前ある雑誌「日本の経営者ベスト居100」という特集が有りました。この中に一人だけ私の知り合いが居ました。マネックス証券の松本大社長です。この特集では、それぞれ社長にとって「大切な事は何か」をインタビューしていました。松本氏のコメントは、「自分は判断力に自信が有るがそれでも6割から7割位しか正しくない。3,4割は判断を間違う。その間違った判断が会社を窮地に追い込むかもしれない。自分は自分の周りに自分と異なる考え方をして、それを指摘してくれる人を経営のシステムとして置く。それが、会社としての判断力を100%に近づける」と。
同じような話を中曽根元首相も言っておられます。中曽根氏は、首相であった87年に、ペルシャ湾への自衛隊の掃海艇派遣をアメリカから要請されました。親米派の中曽根首相(当時)は当時世界一と言われた自衛隊の機雷除去技術を使おうと、閣議に諮りました。何とか閣議を通したい中曽根さんに毅然と立ち向かったのは、当時女房役の後藤田正春官房長官(故人)でした。防衛庁長官と並んで官房長官は国防に関して大きな権限を持っています。また閣議は全会一致が原則です。強行採決も辞さない構えの中曽根首相に対し、後藤田氏は、もしどうしても通したいなら自分を罷免してほしいと延べ、これには中曽根さんもあきらめざるを得なかったそうです。後になり、「あのときは、後藤田さんに救われた。」と中曽根氏は言っています。今と違い国民の感情やアジア諸国との関係を考えると、もし自衛隊派遣を行っていたら、大変な事になっていた、と自身で認めていらっしゃいます。また後藤田氏の葬儀の席で、河野洋平元衆院議長は「自衛隊の海外での武力行使を決して認めない、イラク戦争を間違った戦争と断言する。平和を常に考えるハト派の指導者であり、体制派でありながら少数意見を述べることを決して躊躇しない方だった」と別れを惜しんでいました。このように自分の身を顧みず、会社を思う社員は宝です。
第26章のまとめ
我が身を捨て、会社の為に社長に逆らうような社員を大切にせよ。