Q3.貴方の会社には、社風と言えるようなものはありますか?
2009-07-05 (日)
社是や社訓が一定の期間を経て社内に浸透し定着し、皆が無意識のうちに社是社訓を実践できるようになった時に、初めて、企業文化と呼べるものがあると言えます。すばらしい社是社訓があっても、壁のお飾りのようなもので終わっている場合、その会社には企業文化と呼べるものは無いと言えるでしょう。
企業文化にまで昇華した社是社訓は、ある種の宗教のように社員の心を満たします。ベースとなる価値観や方向性が明確になることで初めて自主的な行動が生まれるのです。
自主的な行動は、自分で決めて実行する行動ですので、やらされている感はありません。社是社訓の実践はむしろ喜びに繋がるはずです。
社是社訓はあるが、お飾りのようなものでほとんどの社員の心に響いていない会社をよく見かけれます。社是社訓は作ることでおしまいではありません。社内に浸透させる努力をしなければ、社員には伝わりません。伝わらないと社員はどう仕事をしていいか分かりません。分からないからつい、上司に具体的な仕事の手順などを聞いてしまいます。これが所謂「指示待ち族」です。この状態が10年、20年と続くと、次第に慣れてきて、しまいには、上司に「お手」と言われれば、本当に「お手」をしかねない熟年サラリーマンが出来上がります。
社是社訓を定着させるにはどうすればいいでしょう。残念ながら、特効薬はありません。地道にまるで宗教活動における神父のようにリーダー達が、繰り返し、繰り返し布教活動を行うのです。手を変え品を変え、至る所に、トイレにも、会議室にも、朝礼でも、会議の席でも、就業規則にも、定款にもあらゆる管理規定のなかにも社是社訓の理念を反映させておかなければなりません。館内放送が出来る会社は一日に一回は社是社訓を放送すべきです。
「部長、またその話ですか、私はもう50回以上聞きました」と入社3年目の若手が言えば、課長は「私はまだ100回しか聞いていない。もっと聞きたい」と返します。繰り返しの繰り返し、これが大切です。
私も一日に5回ほど言っていたことがあり、ある幹部から、社是でおなかいっぱいで、胸焼けしそうです、と言われましたがめげませんでした。
社是社訓は大脳皮質の溝として脳に焼き付けるべきものです。無意識の世界にまで浸透させるのです。こうすると、企業文化が生まれ、仮に社是に書かれていない事態が起きても社員は社是社訓に則った行動が瞬時にとれるはずです。
私が若いころリクルートで仕事をしていた時、明らかに企業文化と呼べるものがありました。たとえば「何か思いついたら、下準備なしに即実行に移せ。あとはやりながら考えよ」これは、明文化はされてはいないけれど、全リクルートマンが知っている当然の常識でした。
私の会社で出向社員として働いていたI君は2年ほどで元の会社に戻りました。数ヶ月後私の会社に顔を出したとき、「このような自由な雰囲気(文化)が懐かしい」と漏らしているのを私はたまたま聞きうれしく思いました。
また私の会社では社長である私に対して何を報告し何を報告しないかは、社員の間では暗黙の常識が在ったようです。私は、経営上の大きな問題以外は、何事も社員が自主的に判断すべきと考え、事前のお伺いを極端に嫌いました。特に、うまくいっていることに対しては、私は邪魔をしたくないと本音で思っていました。何か失敗をした場合は相談に乗りましたが、その処理はあくまで社員が自主的に行いました。
企業文化の浸透は、コミュニケーションのスピード、コンピュータ用語でいえば通信のビットレートを向上させる効果があります。短い時間のやり取りでお互いに深い部分まで議論出来るのは、前提となる考え方を双方が暗黙の定理として認識し理解しているからです。
第三章のまとめ
社是社訓は文化にまで昇華させて初めて効力を発揮する。浸透には「繰り返し」「しつこさ」が大切。この企業文化は社員一人一人の判断力や社員同士のコミュニケーション力を格段に向上させる。