Q44.あなたは①職人、②管理職、③アントレプレナーのうちどのタイプですか?
2010-06-15 (火)
一般的な中小企業は、社長が職人気質で個人商店の形からスタートしている場合が多いです。ところが商売が繁盛してくると経理、人事、総務などの管理業務が社長を待っています。元々職人タイプの人は、このような管理業務が得意ではありません。
私の高校時代の親友に札幌で税理士を開業している島上浩一さんがいます。彼のクライアントは飲食店が多く忙しくしています。さぞ事務所としても安定的な利益を出しているのだろうと聞いてみると、「いや、クライアントのほとんどが職人タイプで、年度末になって日付もバラバラな領収書を持ってきて、後はよろしくお願いします、と言う人が多い。くたびれ損の骨もうけである」とぼやいておりました。
このようなお店は、年度を締めるまで儲かって居るかどうか分かりません。実際は大きな赤字を出しているのに年度末まで気がつかないと言うケースはしばしばあるそうです。このような会社は、いくら繁盛しているように見えても資金繰りが行き詰まり黒字倒産する事も希では無いとのことです。
私のおすすめは、事業が発展し管理業務が増え、自分でこなすことに無理を感じたら、管理業務の得意な人を雇い入れる事に限ると思います。社長は職人の仕事に集中していればいい。
このような状態で会社が発展する場合、3つの落とし穴が有ります。
一つは、社長が1職人としての仕事しかせず、残りを管理担当の人に丸投げしチェックもしていない場合。たぶんこの管理の人は遅かれ早かれ会社を辞めてしまうでしょう。実は管理関係の仕事は本来社長が最終的に判断をしなければいけない分野で、ここを丸投げしたのでは、管理担当者が普通の給与で社長の仕事、例えば資金繰りなど、をする羽目になる。これでは割に合わないと感じ始めるからです。
もう一つは会社が実質管理担当者のものになってしまうと言う現象です。例えば、従業員は社長の言うことは聞かないが、管理担当者の言うことはよく聞く、等です。実際にリスクをとっている社長が「社長の権限を明け渡す」とするならこれもいいでしょう。ただし、その場合は社内社外に混乱を産まないため、この管理担当者を社長にすべきです。
実例では、マイクロソフトの創立者ビルゲイツ氏は、3年くらい前から、「自分はCEOの職責よりCTO(技術開発担当責任者、つまり職人)の方が才能を活かせる」と考え、スティーブパルマー氏にCEOの座を明け渡してしまいました。
あともう一つ、不正です。人間弱いもの、他人のお金をチェックなしに預けられると、最初は変な気が起きなくとも、時間の経過とともに自分の懐にお金を入れたくなるのが人情です。このような事は、やる本人が悪いのは当たり前ですが、このような環境を作ってしまった創業者にも責任が有ると私は、思います。不正の出来ない、仕掛け作りを創業者が作っておくことは、管理担当従業員への思いやりです。
アントレプレナータイプの人が持っているのは「情熱」とリスクをとる「勇気」です。これは職人タイプの人が併せ持っている事が多いです。しかし、成り行きで会社を作ってしまったとか親の事業を継いだ場合など社長の右腕左腕には情熱を持ちリスクを取る人が必要です。
このような3つの資質が会社運営に必要なのは、マイケルEガーバー著の「初めの一歩を踏み出そう」から、多くを学びました。希に三拍子そろった人がいます。しかし、前に学んだ様に、1人で会社を切り盛りするとワンマン体制になりやすいので、主に管理面にCFOを置きCEOはその報告を聞くとした方がいいと思います。
第44章のまとめ
事業には「職人」「管理」「アントレプレナー」の3つの資質が必要。一つでも欠けると事業は行き詰まる。仮に社長すべて併せ持っていても、ワンマンを避け権限を分散したほうが経営はうまくいく。